声という音の倍音を意識するようになった
人と会話する時、声のトーンや口調、話す速度を意識する。仕事では特にそうで、理由は保身の為でもあるが、そうであったとしても、 “声” という人様の耳に入れる音は、なるべくなら不快でない方がいいように思う。
心理士の肩書きを持つ人と仕事で一緒になる時がある。私はその人の声を聞いていると緊張がほぐれて、一瞬仕事を忘れる。湯船に浸かって一日の疲れを癒している時のようにリラックスしてしまい、目の前にいる利用者の困り事をちっぽけな困り事だと捉えて、前向きに取り組んでいこうという気になる。
以前から、この人の声と口調には魅せられていたのだが、話しをするだけで気持ちが和み親しみを感じるのは、心理士の知識や実践から来るものがあるとしても、この人の “声” に私は心地よさを感じて慕っているような気がしていて、“声”に関心を持っていたところ、10年イシウエさんのエントリーに『倍音』の事が書かれていた。それを読み、私は、なるほどと膝を打った。
- 倍音には”整数次倍音”と”非整数次倍音”という二種類があります
整数次倍音は「ギラギラした音」、楽器だとチャルメラやバクパイプ、芸能人だと美空ひばりや黒柳徹子、タモリの声がこの整数次倍音を多く含んでいます。
整数次倍音を多く含んだ声は聞く者にカリスマ性、頼もしさ、荘厳さ、宗教性を感じさせます。
- もう一つの非整数次倍音は逆に「ガサガサした音」、楽器だとケーナやパンパイプ、また自然の中で聴かれる音には非整数次倍音がたっぷり含まれています。芸能人だと森進一や桑田佳祐、ビートたけしや明石家さんまなどいわゆる”ハスキーヴォイス”の人たちが非整数次倍音が強い声です。 この非整数次倍音を聴くと我々は親しみやすさ、重要性、優しさを感じるのです。
私が魅了されている心理士のあの人の声は非整数次倍音のような気がする。重要な事柄であっても、そう威圧的に感じず済んでいるので心理的に助かっている。
声による印象というのは大事である。
倍音のことを知る以前から会話する時は何気に遣う言葉に加え声のトーンにも気をつけている。もう何年も前の事だが、登録ヘルパーさんに「恩着せがましいわ!」と罵られた事があった。その一件から大事な事を伝える時、特に、私の事を好ましく思っていそうにない人だと察知した時ほど、笑顔で低めの声を出し言葉少なめを意識するようになった。そういうこともあり、自分の声が人の耳に入り、どんな印象を与えているのか倍音から手掛かりが得られそうに思うのだ。声も人間関係が上手くいくための潤滑油のひとつだろうから。