訪問介護事業所に実地指導がやってくる
ちょっと前、訪問介護の事業所に介護保険の実地指導を行うという通知が届いた。
実地指導とは、役所の担当職員が、介護サービス事業所を訪れ、書類を見ながら、利用者の生活実態やサービスの提供状況、報酬基準の適合状況などを確認し、時に指摘をして、より良いケアの実現と、保険給付の適正化を図る為に行われる。
ヘルパーが利用者宅に訪問し、何を行ったかという証拠になる書類はヘルパー自身が書くものであり、それを毎月確認をしているので、そこには不正の不安がない。問題は、サービス提供責任者が作成する計画書の作成と書類の管理である。10年近く、介護保険の実地指導が来なかったため、気の緩みがある。
改めて書類を見直してみると、実に粗末であった。書類の紛失(引き出しに入れっぱなし)や見落とし(記載漏れ)これでいいかとタカを括って仕上げた計画書(文章がおかしい)過去のアルバムを見ているような恥ずかしい気持ちになった。
当日に向けてシュミレーションをすることは大事だ。備えよ常に。
数ヶ月前に実地指導が行われた同業から、その実際を聞いてみることにした。
「終了した利用者の書類を見せろ!」あれ見せろ!これ見せろ!と、威圧的な態度で実地指導が行われたという事業所もあるようだ。緊張がほとばしる。
しかし、ラッキーなことに、2019年5月、厚生労働省は指導監査を行う各自治体に向け、「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」というものを発表した。簡単にいうと、実地指導のマニュアル化という通達である。
なぜ、マニュアル化する必要があったのか。どうにも全国の自治体ごとに指導の内容や確認項目が、点でバラバラであったようだ。事業所の数が多い自治体では、実地指導の実施が追いつかない状況であり、ムラがある。そういうのを無くし、より多くの事業所に実地指導を行うためには、指導を標準化して、事務負担を減らさねばならんということらしい。
事業所にしてみても、これはとても喜ばしいことである。標準化というのは、実地指導の所要時間の短縮も意味している。確認する文書が予め分かっているという事だ。
確認する書類については、前年度から直近の実績に係る書類であるというのも有り難い。長らく契約されている利用者の書類の量は半端無い。さかのぼり目を通してアラを見つけられ、針のむしろに座らせられるのは御免だ。こんな目に遭わずに済むなら、それに越したことはない。
他には、指導に当たる職員の主観で指導してはならぬとか、指導内容については、その根拠や主旨、目的を懇切丁寧に事業所側に説明をして、我々サービス提供責任者の話しもきちんと聴かねばならないとされているようだ。それに加え、高圧的な言動をするべからず、という御触れも出ているという。
時代は変わった。
空請求、水増し請求といった不正請求をして介護報酬を騙し取り懐に入れていると踏んだなら、瞬く間に監査に切り替わり、質問攻めの調べが待っている。書類は没収され、ヘルパーにも聴取する。ヘルパーは質問に対し正直に答えるだろう。そして後日改め、聞き取りが行われ、この期に及んで嘘八百の虚偽答弁で逃げ切ろうとしても、裏を取られていること多し。どうもがいても待ち受けている先は指定取消し。要は悪質。過去、実地指導が来るというのは、こういったことを思い起こさせ、灸を据えられるかもしれない恐怖に怯えるものであった。何ひとつ悪さはしていないとしても。
しかし、厚生労働省がマニュアル化を発令したと言え、簡素化された実地指導の情報は皆無であり、10年ぶりの実地指導はやんごとなき日であることに変わりはない。指導対象の項目と文書を押さえ準備する必要がある。お奉行様がやってくる。
【つづく】
平成30年度介護報酬改定対応実地指導はこれでOK!おさえておきたい算定要件【訪問介護編】
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