分かちあいたいブログ

福祉サービス事業所で働いてます。福祉のこと。他いろいろ 

今年は「別れ」の一年だったなと・・

5年前、高齢者施設を辞め、訪問介護事業所に転職し、三ヶ月の使用期間を終えた頃に出会った利用者二人と、今年の春と秋に「別れ」をした。このお二人は疾患は違えど難病患者であり、介護保険の利用者ではなく障害者福祉を利用する中途障害者である。

 

双方とも病気の進行により徐々に床に伏せる時間が長くなり、次第に全介助となっていった。仕事として施設での経験が自宅での介助に活かされたのは、せいぜい新人ヘルパーさんの身体介護の技術指導くらいなもので、改めて利用者の気持ちの波に寄り添うことの難しさを感じてならなかった。

 

難病患者等ホームヘルパー養成研修テキスト

難病患者等ホームヘルパー養成研修テキスト

 

 

進行していく難病は、オートマチックに身体が動かなくなったとて、治療法や薬は無い。痛みや痺れ麻痺を医師やヘルパー、各関係機関の者に訴えるが解消されることがないまま歳月が過ぎていく。

 

生きたいという思いは、苦悶の日々であっても前向きに考えることを利用者の無意識に働きかけたようだが、ポジティブマインドはそう長くは続かず、隠し切れない悲嘆な感情を吐き出す事も。 自殺をほのめかす、食事を拒むなど自暴自棄に思える言動や態度に、私自身も反応してしまい力尽き消耗していった時期、いよいよ燃え尽きてしまいそうになったのを覚えている。

  

セルフヘルプグループへの招待―患者会や家族会の進め方ガイドブック

セルフヘルプグループへの招待―患者会や家族会の進め方ガイドブック

 

 双方とも、ヘルパー支援を受け容れることを辛がるのだが、それは、いよいよ終わりというのを想起してしまい、こんな筈ではなかった想定外の病に、何故わたしだけ、と繰り返し自問されていた。それと、惨めという言葉を言っていたのを思い出す。

ただ話しを聴くということが、こんなにも忍耐を要するものなのか、利用者と関わる際、陰と陽をひっくるめて受け容れ私自身が平静でいることの難しさを知った。

  

プロカウンセラーの聞く技術

プロカウンセラーの聞く技術

 

 

 この利用者お二人が最も危惧されていたのは、家族やヘルパーの居ない時に独りで苦しみ、逝ってしまうのではということだった。かといって、施設は嫌だ、まだ、お婆さんになっていないから入りたくないと言う。そこは譲れない様子で強い意思を表に出されていた。

在宅でいるということは、ヘルパーが全てを見守ることは出来かねるので、そういうリスクがありますねと説明させていただいた。

 

 

早引き介護の急変時対応ハンドブック

早引き介護の急変時対応ハンドブック

  • 作者: 佐々木静枝
  • 出版社/メーカー: ナツメ社
  • 発売日: 2012/04/18
  • メディア: 単行本
  • それほ見それ
 

 季節をずらし、それは、どちらも突然やってきた。利用者お二人の急変に、たまたま居合わせたが、お二人とも苦しむことなく、目が合い微笑まれた後に意識を失われた。その後は在宅に戻ることはなく、お別れとなった。

 

振り返り

入社と同時期にご縁をいただいた利用者お二人との関わりは、他の利用者と比べるわけではないが、テキスト丸ごとの知識や技術を駆使してきたような気がする。途中、心理士も面談に来られたが拒否をするので、トンネルの薄暗がりの中、手探りで歩むといった印象を抱いている。それは、一歩ずつ慎重に、はぐれない様に、多分その先は光があるぞ、みたいな希望の想像を膨らませもし、とにかく、利用者も私も頑張った。今後は、もう、これほど仕事で頑張りきってしまうような事は無いかもしれない。介護というのはエネルギーを要する。誠に勝手ながら、余力を未来に訪れるであろう自分の親の介護の為に取っておきたいと考えてしまう。

訪問系の仕事は高齢者だけではなく、障害者福祉サービスの在宅支援の仕事もあり、今、私がエネルギーを注いでいるのは、そちらの自立支援の方だ。知的、精神の方の自立を支えていく仕事が増えてきて、暮らしをどう充実させていくのかを共に考え実践していき、望む現実、なりたい自分に向かっていく事を応援するのは、仕事を忘れるくらい楽しい時がある。

「自分で出来るのって幸せなこと」と難病を患う利用者が天井を見つめながら呟いた言葉を、大切なメッセージとして活かしていこうと思っている。