額のド真ん中が割れるように切れた 前編
週明け、事務処理に明け暮れていた。夜中に集中力が途切れ、おもむろにフラリと席を立った。2、3歩ほど歩いたその瞬間、足元にあったダンボールに躓きコケた。そして、その先にあった机に額をブツけてしまった。
あーウッカリしたな。笑い話しを作っちまったな。
などと考えていると頬が濡れているような気がしてきた。あまりの痛さで知らず知らずのうちに涙を流したのだろうか。それとも鼻水が垂れているのか。
頬をつたう何かを手で拭うと、赤い液体がベットリと手に着いてきた。それを見て、血が流れていることを知った。
額を触ると、割れているといった感が手から伝わり、ヒ~っ!となった。
血と傷にビックリして、泣くか、それとも喚くか。両方してみた。そうこうするうちドキドキと不安が強まってきた。こりゃいかん。血が止まる気配が無いので、急患対応の病院へ行くことに。
病院に着くと安心して脱力した。傷口をタオルで押さえる手がだるい。もう血も止まっただろうと勝手にそう決め込み、タオルを傷口から離した。しかし数分後にタラーっと血が頬を伝う。付き添ってくれた会社の人が慌ててウエットティッシュで顔を拭いてくれた。自分では血が出ている事が分からない。もし付き添いがいなかったら、私は待合で血を垂れ流していることに気付かず、安堵した表情でソファに座りくつろいでいたに違いない。
待つこと30分。問診を終え処置室へ。いざ!
傷は、縦に三センチ深く入っていると医師より説明を受け、『縫いますよ』との事。
二回目の、ヒ~っ!!が心の中で訪れた。声にならない心の叫び。
麻酔の注射が怖い。途中で麻酔が切れたらどうしよう。私の額はどうなるの?
という心配はヨソに程なくして処置が済まされた。そして一週間後の抜糸と傷口の洗浄方法の説明を受け帰宅した。
今、おでこの真ん中に四角い傷テープを貼っている。その姿は、どう見てもオチャラケている。真面目なこと言ったところで説得力がない。
そして抜糸後は傷が肌に馴染むまで人相は悪くなるだろう。
隠しようのない部位にできた傷を晒しておいて、嘘はつけないなと想像する。なので、これからは自分に正直に生きていこうと考えた。
外側に作った傷は内側の自分にも影響を及ぼしているようだ。
後編では、ドキドキの抜糸の話しです
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